2016年09月04日

君の名はジュエリー 前

ガサガサと音がする
目を凝らしても何も見えない。

しばらくすると また同じ音
思い切って手を伸ばしてみると、それはペンダントのチャームだった。

なーんだ
そう呟くと サトシは再び眠りに落ちた。

あー 危なかった
そのペンダントは思った。

人間は知らないけど
彼等は、生き物なのだ。

物に魂が宿ると言うけど
それが事実だと思ってる人間は、どれだけいるだろう。

彼等 ジュエリー達は
生きている。

生まれたばかりの時は、無生物だけど

人が身に付ける事で命が生まれる。

強力な永久磁石が、くっ付いた鉄を磁化するように、一つの命が生まれるのだ。

ブレスレットだったり ティアラ ピアスにペンダントなどなど

たまに歯のパラジウム合金が
、命として誕生する事があるのだが、取り外されるらしいのだ。

なぜなら
彼等ジュエリーは、人が眠っている時に振動するからなのだ。

振動で音波を発生し
お互いに会話を交わす。
それは、仲間との楽しいひと時だ。

時として甘い囁き声だったりするのだけれど

でもそれがパラジウム合金だったら、振動ですぐに人は目覚めてしまう。
いずれ浮いた状態となり、取り外されてしまうのだ。

甘い囁きと書いたが
彼等の世界で全てがプラトニックラブ。
それが普通の事なのだった。

全世界の人は色んなジュエリーを身に付けている。

そして、それぞれの国には標準時があり、職業によって眠る時間はまちまちなので、いつもジュエリー達の音波 声無き声は飛び交っている。

大半の人間は
家で目覚めて職場に向かう。

そういう生活をしているから
一つの地域のジュエリー同士は、だいたいお互いの存在を知っている訳だ。

サトシの住むその町も夜になり
シーグラスをレジンで包んだそのペンダントは、いつものようにその体を震わそうとした。

するとその時 今まで聞いた事もない変わった声が聞こえて来たのだ。

つづく



Posted by もんじゅ at 03:06│Comments(0)
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